天皇即位二十年の式典を祝う新聞の写真。 サイパン島のバンザイクリフの断崖絶壁の岬で、天皇皇后おふたりが 海に向かって黙礼している。 そこは、敵軍に追い詰められて、「天皇陛下万歳!」と両手を挙げて 日本兵が身を投げたところ。 戦後六十周年の夏、両陛下は慰霊のため彼の地を訪れました。 私は、静かに頭(こうべ)を垂れる後姿に、目頭が熱くなりました。 今回の記者会見での陛下の言葉。 「私がむしろ心配なのは、次第に過去の歴史が忘れられていくのではないかということです。」 その時、今は亡き日本語研究家の大野晋(すすむ)先生の 心配と重なります。「美しい言葉より、まず正しい言葉を」 そして、天皇皇后の言葉を思いました。 お二人とも軽率には語れないお立場でもありますが、 じっくりと言葉を選らんでおられる。 誰よりも、言葉というものの重さをご存じなのだと思います。 陛下は非常に控えめな方ですが、それが一層大きな人物に見えてしまいます。 象徴のお立場とは言え、名君の中の名君だとさえ思えます。
2009年11月12日