フライパン倶楽部

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地震があった翌日に、弘前まで葬儀に出掛けました。 新幹線の旅で、東京から八戸までは、立席しかとれず、デッキで座り込み。 ふと手にしたのが、新潮文庫の「山椒大夫」。 騙された親子が引き離され、人身売買される。 安寿の犠牲によって、弟の厨子王が、山椒大夫のもとから逃れる。 そして、生き別れた母の玉木を探します。 ついに盲目となった母は、けなげにも安寿と厨子王の名前を呼んで歌っていた。 その歌声で厨子王は、母であることを知ります。 息子を前にして、涙がポロリと落ちた時に、母の目が開かれます。 私の目からも、ポロリポロリと涙が流れてきました。 こんなことがあって良いのか。 しかし、北の国に囚われて、未だ引き離されている安寿と厨子王が、 この時代にもいます。その帰りを今日も待ちわびている玉木もいます。 けど、それを他人事のように、痛みを感じれない自分の心の中にも、山椒大夫が潜んでいるようです。 到着した弘前では、ともに寄り添い、ともに涙を流せることに、 一条の光が差したようでした。

2009年08月17日

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