きいろさん（北海道河西郡）さん

2021/10/28

こちらで十年前に買ったリバーライトのフライパンは、ほんとうにすばらしいです。 近年は忙しさにかまけてしまい込んでいたので、コツを忘れて焦げ付かせてしまいました。 そうだ、油返しをするんだったと思いだしながら使ってみると、すごくいい。

何がいいのかと申しますと、できた料理を食べる時の、体内への浸透率がどうも違うのです。 すーっと細胞の中に染み渡ってゆく感じです。 体調が悪いから料理をやめようかなと思った日にようやく作った麻婆豆腐が、とっても美味しくできたのです。 一口食べるごとに、生き返ってゆく感じでした。

最近頼り切りだった電子レンジの調理は大変便利なのですが、素材と調味料がどうも反発しあっているような感じがします （あくまで感覚的なものですが）。 鉄フライパンで調理したものは、油と素材と調味料がミックスされただけでなく、 特有の化学変化を起こして、別種の食べ物になっているような感じがします。胃もたれせず、たいへん消化によいのです。

それからフライパンの虜になり、三日続けて磨き直してピカピカにしました。 火を入れた時にできる玉虫色の光沢は、まるで吸いこまれそうな青さで、いつまでも眺めていたいほどです。 思えば、自分の育った家は鉄工所でした。 溶接した鉄のかけらを拾っては、不思議な青さに見惚れていた子供時代を思いだしました。 鍋肌を見つめるたび、なにか深い源流に還ってゆく心地がいたします。

鍋肌のカーブも美しく、使いやすいだけでなく洗練された造形美をも持ち合わせています。 料理が美味しいだけでなく、眺めて満足できる逸品として、いつまでも撫でて磨いていたいほどです。 堅牢でありながら最小限の部品で構成されているため、無駄のひとつもなく大変に洗いやすいところも愛してしまう理由のひとつです。 工芸品ではないかと思えるほどのクォリティなので、一万円以下で手に入るのは、安すぎるんじゃないでしょうか。

使いこむうち茶色になってゆくのが悲しかったので、手入れをして以前の美しさに近づけることができて、とっても嬉しいです。 取っ手は未だに堅牢そのものなのですが、塗装が剥げたのを交換して美しくしてあげようと思います。 これまで28cmの厚板フライパンひとつで焼き物炒め物をしていましたが、ついに炒め鍋を買うことにしました。 十年がんばったんだからいいか！　と自分に言い訳をして（笑）、本当はあの美しい鍋肌を眺めたいだけかもしれません。

リバーライト社の製品のすばらしさと匠の技にあらためて感じ入ると共に、 詳細に使い方のコツを解説し販売してくださったフライパン倶楽部さんにもひとことお礼を申し上げたく、メールをいたしました。

スタッフより

瑠璃色の鉄と言いますか、地球誕生の悠久の世界にまで誘うような文章ですね。 人類は鉄とともに歩んで参りました。今日も鉄なしでは生活できないでしょう。 特に、火の扱いとともに鉄器の誕生は、生活を大きく変えたのだと思います。 そんな歴史が鍋肌に刻まれているように感じます。 あるいは、ご実家が鉄に向き合っていたからこそ、このような言葉が生まれてくるのだとも思いました。 そんなお気持ちで鉄製道具を握れば、理屈を越えて、自然と料理も美味しくなるのかもしれません。 また、「詳細に使い方のコツを解説し」のさりげない一言もありがとうございます。 適正な使い方を知ってこそ、今回のような世界が広がってくるのだと思いました。