春爛漫。広小路の桜もすでに満開を迎えています。 折りよく、新渡戸稲造(にとべいなぞう)先生の「武士道」を 矢内原忠雄(やないはらただお)先生の訳で読んでいました。 「敷島の大和心を人問わば、朝日に匂う山桜花かな」(本居宣長) そして、ヨーロッパの人が愛でる薔薇(ばら)との比較が綴られています。 「薔薇は桜の単純さを欠いている。 さらにまた、薔薇が甘美の下に刺(とげ)を隠せること、 その生命に執着すること強靭(きょうじん)にして、 時ならず散らんよりもむしろ枝上に朽つるを選び、 あたかも死を嫌い恐るるがごとくであること、 その華美なる色彩、濃厚なる香気― すべてこれらは桜と著しく異なる特質である。 我が桜花はその美の下に刃をも毒をも潜めず、 自然の召しのままに何時なりとも生を棄て、 その色は華麗ならず、その香りは淡くして人を飽かしめない。」 見事に桜の美を表現した名文です。 それに共感してしまう自分があり、 ああ、私は日本人なのだと改めて思いました。 そんな時に、桜の花とともに散って逝かれた ミスタークックパルこと吉川正芳さんのことを思い出しました。 2年前、突然の訃報に驚いたのですが、まさしく桜の花が散る時期に逝かれたのは、 本望だったように感じます。
2008年03月28日